10月 07

 駅ではなく そこは まさしく「驛」だった。 
まして そこに 驛があるなど 思いもよらなかった。
房総の山 尾根伝いを歩いていた時 眼下が開け 
田園風景が 飛び込んで来た。

 遠くに山並みが続き 田植え前の田圃には 水が一面に
張られ 鏡のように 空の青と山の緑を 映している。
音といえば 木々を渡る風に 弧を描きながら 
天高く昇っていく 鳶の鳴き声くらいである。

 小一時間ほど 木陰で休憩をとっていると 遠くから 
レール音が響き 次第に近づいて来る。
見ると 田圃の真中を 電車が一両 遠目でもわかるように
 車体を揺らしながら ゆっくりと走ってくるではないか。

 なんと 田圃の畦道と見えた所は 単線の軌道線路で 
僅かに木々が茂り 小屋だと思ったものは 無人の驛舎。
電車から 降りる客はなく 乗り込む人もいなかった。 
その風景は 実に優しく 懐かしい静けさに「長閑(のどか)」
の二文字が 見事に似合う。

「そこは 紛れもなく驛でした。 泣けてくるほど ぐっと
くる景色は 最高です!。 過疎などには 決して負けず
今日も一両の車体を ゆらりゆらりと揺らしておくれ 
ありがとう 上総川間驛。」 

「川並」映画用シナリオ資料 001~068まで

映画シナリオ用に 資料集めで房総半島を歩き 取材をした。
その時撮影したネガフィルム。