1月 12

その現場。

 取材を終え 原稿を認めようと 
浦安駅前にある ファーストフード店に入った時
目撃した出来事である。

 駅の改札は 帰宅帰りの客が大勢いて 店の外にも行列を
作り並んでいた。 店のスタッフは 多忙な中 笑顔の接客
応対を繰り返し 手際よく商品をさばいていた。 
店内に入り ようやく自分の番が巡ってきて オーダーを口に
した時 隣にいた年配の男性が 突然若い女性スタッフに対し
罵声を浴びせた。

○カウンター
男     「(顔を真っ赤にして)バカヤロー! 何聞いて
       ンだよ 違うじゃねえか。 この野郎!!」
スタッフ  「(茫然として)」
男     「(人差し指を押し付け))俺が 注文したものを
       出せよ!」
スタッフ  「(うつむいて)これが お客様のご注文された
       ものですが・・・」
男     「どこがだよお 違うって言ってンだろ! 
       バカヤロー。 人の云うことが聞けねえのかあ 
       この野郎」
スタッフ  「(か細く)申し訳ありません」
男     「責任者出せ!  お前じゃ話にならン」

○店内
       にいる客・店員の動きがとまる。
       奥から 若い女性スタッフが 姿を現わす。

スタッフ  「(気丈に)申し訳ありません。 何か手違いが
       あったと思いますので お作りし直します」
男     「(睨みつけ)なンだと 思いますので!? 
       俺が違うって言ってンだから その通りの物
       出せばいいンだよ」
スタッフ  「(伝票をみて)ご注文の品は こちらでよろし
       いでしょうか」
男     「ばかにすンじゃねえぞ コノヤロー! 
       さっさとやれよ 女のくせに バカヤロー!!」
スタッフ  「(目に涙をためて)申し訳ありません。 少々
       お待ち下さい」
男     「いつまで待たせンだよ 早くしろよ! バカ
       ヤロー」

○店内    
       静まり返り 外に並ぶ客も 中の様子を覗いて
       いる。
スタッフ  「(笑顔で)大変お待たせ致しました」
男     「ふざけんじゃねえぞ この野郎!]

       新たに作り直された商品 その紙袋を手渡され
       た男が カウンターを離れようとした瞬間 
       男の気をそぐために わざと足元を指差した。

      「あれっ!?」
男     「(驚き 足元を見て)何だよ」

       その時 男の首に下げていた 社員証プレートが 
       胸ポケットから落ちて 一瞬顔を覗かせた。
       男はそのまま 店を出ていった。

○店内
       は件通りの 様子を取り戻し。

○カウンター
      「よく辛抱したね」
スタッフ  「(目から大粒の涙)はい」
      「首から下げていたの わかった!?」
スタッフ  「(精一杯の笑顔で)はい わかりました」
      「赤坂にある テレビ局の社員証だったよね」
スタッフ  「(毅然と)はい 間違いなく そうでした」

       

 怒鳴り散らした男の 身辺調査をした訳ではない。 
あれ程の怒りは あの男にとっては 日常のことなのか
どういう理由で 暴言を発っしたのか 確認した訳でもない。 
小生は この現場に 居合わせただけだった。 
      

                         (了)